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Quiet Day

「BANANA FISH」二次元妄想小説サイト。

I WISH 

その朝、英二はいつもより遅い時間に目が覚めた。

前の晩はニューイヤーの花火をアパートの窓からながめ、
アッシュと新年を祝してワインを一本あけたのだ。
英二はアルコールに強いほうだが、ワインの酔いは翌日まで残る。

天気の良い冬日だった。

パジャマがわりのスウェットのまま、
英二はリビングでしばらくストレッチをした。
寝起きの体がほどよく温まり、額がかるく汗ばんでくるまで。

これはこのアパートに腰を落ち着けてから、ずっと続けている習慣だった。
何しろ彼は十代の殆どを、運動選手としての訓練に費やしてきたのだ。
一日じゅう家の中にこもりきりでは、体がおかしくなってしまう。

この高級アパートメントにはジム施設も入っていたが、
英二はそれを利用したことがない。
アッシュが命がけの戦いを挑んでいるいま、
自分だけが豪華なジムを利用する気には到底なれなかった。

それでも体を鈍らせないことは必要だ、と英二は思っている。
生き延びるために。
彼と共にあるために。

アッシュは、未来について話さない。
明日のことも、その先も。
まるで、未来がないことを恐れているかのように。

彼が語るのは、その日のこと。
いま現在の自分たちのこと。それだけだ。

そして英二にわかっているのは、
これから何が起こるにせよ、
彼の導くところに自分は歩んでいくこと。
いつも自分たちが共にあることだった。

それさえわかっていれば、いい。
ぼくはそれで充分だ。


ざっとシャワーを浴びたあと、
英二は寝室へ入り、カーテンを勢いよく開け放った。
いいかげん起きてくれなけりゃ、新年が終わってしまう。

「アッシュ、ほら、いいかげん起きろよ!」
「ンン…もう少し…」
鼻のあたりまで布団をひっかぶったアッシュが、
かすれた声でつぶやいた。

冬の淡い日光が、アッシュの金髪にはじけて散っている。
まぶしげに細められた瞳は、森のように深いグリーン。
知らず、英二はその光景に見とれた。
彼は今でも時おり、この友人の美しさに圧倒されることがある。

アッシュが金色のまつ毛を揺らして小さくまばたきし、
くぁーっと伸びをする。
その動物めいたしぐさに、思わず英二は微笑んだ。

ほんとに猫みたいだ。

あの気まぐれな生き物と同じくらい優雅で、
そしてたぶん、ずっと危険だ。

「おそよう。もう午後だよ?」
ぐずぐずと布団にもぐりこもうとする寝ぼけ顔に眉をしかめてみせ、
英二は胸のうちでそっとささやいた。

ハッピーニューイヤー、アッシュ。

どうかこの一年が、きみにとって最良のものになりますように。
きみの心と身体が、これ以上傷つくことがありませんように。
すべての闘いにけりをつけ、ふたりで故郷の地を踏めますように。

それが、ぼくの願いだ。

END


遅ればせながら、A×英の新年のスケッチのようなものを。
『WISH』は、実現不可能なことへの願望を表わす意味もあるとか。
(すみません、今年もうす暗くて…)
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Posted on 2011/01/10 Mon. 12:20 [edit]

category: BANANA FISH(創作)

thread: 二次創作小説(版権もの  -  janre: アニメ・コミック

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