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Quiet Day

「BANANA FISH」二次元妄想小説サイト。

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プリーズ・プリーズ・ミー 

その女は、控えめにいってもゴージャスだった。

つややかな漆黒の肌。
たわわな胸と、蜂のように絞られたウェスト、ふっくらとした唇。

彼女はひとりの男にしなだれかかっていた。
名前は、たしかブライアン。
ブラック・サバスの中でも、とくに血の気が多いひとりだ。

「いい女だな。あいつには少しもったいないんじゃねぇの」
「ああ…アンジェラ?」
ケインの部下のひとりが、
ニヤつきながらアレックスに耳打ちした。
「あれ、前はボスの女だったんだぜ」

この女は、もうやりつくした。
そう言って、ケインは自分の女を部下に払い下げたらしい。

へぇ、と感心してみせたが、驚きはない。
それはアレックスの属する世界では、よくある話だった。
たぶん、スキャンダルと呼ぶことさえできない。

「お前らのボスこそ、女がほっとかないだろうがよ。
お前もずいぶんイイ思いしてんだろ?」
どこか物欲しげな声で言われたが、
アレックスはあいまいにうなずいておくにとどめた。

あれだけ女うけのいい外見に恵まれながら、
不思議なくらいアッシュにその手の話はなかった。
もちろん、自分の女を部下にまわしたなんてこともない。

「アレックス、帰るぞ!」
ボスの鋭い声がとんだ。
「イエス、ボス!」
声をはりあげ、車のキーを引っぱり出す。
目の端で、アンジェラとブライアンが
まだいちゃついているのがみえた。

アッシュを送ってアパートに着いたのは、ずいぶんと遅い時間だった。
それでも、英二はすぐ玄関へ迎えに出てきた。
「お帰り。ふたりとも、夕飯まだだろ?」
すぐあっためるから。
あかるい声で、キッチンに入っていく。

英二の料理か…
たしかに腹はへっていたが、一抹のためらいがある。
「食ってけ、アレックス」
それを見抜いたかのように、アッシュが素っ気なく言った。
「ひょっとして、オレにも精神的な支えってヤツが
必要になるかもしれないからな」
ふたりは、試練を知るものにだけ通じる視線をひっそり交わした。

英二はときどき、おそるべき食い物を「体にいい食事」と称して出し、
アレックスたちや彼のボスをおののかせる。
まあ、主に豆とか、豆の加工品とか、腐った豆だ。
でも、今日のメニューは当たりだった。

ジンジャーをきかせた豚肉は甘みをふくんでやわらかく、
キャベツとほくほくしたポテトサラダが大量に添えられていた。
たっぷり野菜が入ったミソ・スープにも豚肉が投入されており、
何ともいえない風味とコクを出している。

アッシュとアレックスは「うまい!」と連呼しながら
皿の中身をがつがつと平らげていった。
英二が満足そうにうなずく。
「気に入ってよかった。またつくるね」
そののどかな笑顔を、アレックスは感慨深く見つめた。

ボスにお守りをまかされたときは、
正直、長い付き合いになるとは思いもしなかった。
ナイフも銃も使えない、ただのお荷物。
きっと一と月もたたないうちに音を上げ、
国へ逃げ帰るだろう。そう思っていた。

でも、この子どもじみた少年は、
泣き言をいうことも、逃げ出すこともしなかった。

ただ毎日メシを作り、写真を撮り、
するりと自分たちの日常へすべりこんできた。
まるで以前からそうだったように、ごく自然に。
そしてその目は、いつもただひとりにだけ向けられている。

英二が冷蔵庫から缶ビールを出してきて、ふたりに手渡す。
「…Thanks」
礼を言って受け取るボスの瞳のやわらかな色に、
アレックスはどきりとさせられた。
ときどきボスは、この黒髪の少年の前で
以前は決して見せなかった表情をしてみせる。

アレックスはあのアンジェラという女を思い出していた。
ボスから部下に下げ渡された女。
うちのボスにかぎって、そんなシチュエーションはあり得ない。
だけどもし、それを強引にあてはめるなら、
こいつがその対象になるんじゃないか?

ビールのプルトップをあけながら、
アレックスはボスが自分にこう言うところを想像してみた。
『こいつは、今日からお前のオンナだ』
想像の中のアッシュの声は、毒をふくみ、甘い。
『なぜって、こいつをヤりつくしたから ━━』

あり得ない、全くあり得ない!!

カァッと頭に血がのぼり、アレックスはビールをガブリとあおった。
とたん、おかしなところに炭酸が入り、むせかえる。

「アレックス!」
英二が立ち上がった。
「気管に入っちゃったんだね、大丈夫?」
ゲホゲホと苦しげにせきこむアレックスに、
英二は水を運んだり、ナフキンを差し出したりと、
かいがいしく世話を焼いてくれた。

「何やってんだ、おまえは」
ボスの声がいつもよりとがって聞こえたのは、
はたして気のせいだっただろうか。

アレックスは、満腹した腹をさすりながら家に帰った。
灯りをつけた部屋の中は、
豪奢なアパートからの帰りということを差し引いても、
いかにもわびしげに見えた。

寝に帰るだけのワンルーム。
ベッドの他に家具らしい家具もなく、
部屋は散らかり放題に散らかっていた。

クロゼットから服がはみ出し、床に広がっている。
ぐしゃぐしゃに乱れたベッドは、
この前シーツを替えたのがいつだったかも思い出せない。

アレックスは溜め息をついた。
こりゃ、いくらなんでもひどすぎる。
この有様じゃ、あいつが料理するどころか、
座らせてやることもできやしねぇ。

アレックスは棚を引っ掻き回し、ようやくゴミ袋を探し出した。
そして散らばったごみを、猛然とそこに放り込みはじめる。

アレックスは働きに働いた。

申し訳程度についてるキチネットに山と積まれた
レンジディナーやピザの空き箱を捨てた。
あちこちに散らばった雑誌を束ね、
ゴミ置き場と部屋の間を何度も往復する。
最後にベッドリネンを全てひっぺがし、
他の汚れものとまとめて地下のランドリーへ運んだ。

ランドリールームは真夜中でも明るく、暖かだった。
ぐるぐると洗濯物が渦を描くのをながめているのは悪くない。
何だか、安らかな気持ちになれる。

スチール椅子に腰掛け、誰かが置き忘れた雑誌をめくりながら、
いつの間にかアレックスは口笛を吹いていた。

そうさ、ボスが英二を「払い下げ」るなんてことはないだろう。
でも、いつかあいつをあのアパートから
逃がさなきゃならないことがあるかもしれない。
そのとき、ボスが一番の部下であるオレに
英二を託す可能性は大いにあるんじゃないか?

その晩、アレックスは見違えるように片付いた部屋で、
清潔なシーツにくるまれて眠りについた。

何かとても幸せな夢をみたような気がするのだが、
残念なことに朝になったらすべて忘れてしまっていた。

END



アレックス版・断捨離ストーリー(ウソです)。
豚のしょうが焼き+ポテトサラダ+豚汁は
男子の黄金コンボらしいです…


Posted on 2010/10/11 Mon. 00:11 [edit]

category: BANANA FISH(創作)

thread: 二次創作小説(版権もの  -  janre: アニメ・コミック

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コメント

感動しました! 

東雲さん、こんにちは!
新作2作品、読ませて頂きました。
いや、実は『図書館で』が少し前にUPされてたのは知ってたんですが、アッシュの最期のお話という事だったので、ちゃんと時間がある時にゆっくり読みたいと思い、今日まで待っていたんです。
……泣きました。 泣きましたよ~。
アッシュの最期はこれまでも色々なサイトで取り上げられたテーマで、どれも素晴しかったですが、東雲さんの作品も優しさに溢れていてとても素敵でした。
私のおぼつかない言葉で感想を綴ると作品のイメージを損ないそうなので多くは言いませんが…
でもこれだけはお伝えしたい!
感動しましたっ!!

でもそのすぐ後に『プリーズ・プリーズ・ミー』を読んで、今度はプププッと吹き出す始末 ^^;
私ってこんなゲンキンな女だったのね、と実感です(笑)
東雲さんの作り出す、無駄な装飾を全て取り払ったリアルなバナナの世界、本当に好きです。
掃除を頑張ったアレックスに、何かいい事ありますように☆

それから、リンクの件。
どうもありがとうございます~。
こんな素敵なブログ様と繋がれて、本当に嬉しいです!

URL | 芙月 #YVWDSDMY | 2010/10/11 16:14 | edit

面白かったです! 

こんばんは!
プリーズ・プリーズ・ミー、すごく楽しく読ませていただきました。
英二のことを考えて、掃除しちゃうアレックス、かわいいなー。
それから、英二の作ったしょうが焼きと豚汁、おいしそうでしたねー。私も食べたいです。

URL | yukino #- | 2010/10/11 21:20 | edit

Re: 感動しました! 

芙月さん、こんばんは~
『図書館で』『プリーズ・プリーズ・ミー』2本ともに心のこもった感想をいただけて、たまらなく嬉しいです!
本当に、いつもありがとうございます。

リンクは、ついにあのかっちょいいバナーをバン!とはりつけることが出来て、なんだか本懐をとげた気分です(笑)
「芙月さんのサイトからたどって…」とご訪問くださるかたも増え、某占い風にいえば「このサイトは100%、芙月さん成分で出来ています」といった感じでしょうか。
久しぶりにきたBANANA大回転、今回はブログも立ち上げて大いに盛り上がるつもりですので、ぜひ今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします<(_ _)>

URL | 東雲 #- | 2010/10/11 22:23 | edit

Re: 面白かったです! 

yukinoさん、いらっしゃいませー♪
芙月さんともどもさっそく感想いただき、ありがとうございます。
ananによると、お片づけは恋も仕事も癒しもオールおっけー!な特効薬だそうですよ。ほんまかしら。

そして英二は体育会系出身なので、アッシュにあわせてこじゃれたサラダなんかつくりながらも、こういうがっつり系もお得意にしてたんじゃないかと思うんですよ。
ゴル邸襲撃のときなんかは、「タコおやじに勝つ!」とトンカツあげてたりしてほしいですね、個人的に。

URL | 東雲 #- | 2010/10/11 22:24 | edit

今度は笑いました(^0^) 

こんばんは!今度は笑いました。
でもアレックスの部屋のくだりを読んで「うを~っ!笑ってられない」と思いましたよ(^^;
今度は是非とも豚カツを揚げてる英ちゃんにお目にかかりたいですぅ~。

URL | 横島夜音 #daoubJSA | 2010/10/11 22:42 | edit

Re: 今度は笑いました(^0^) 

横島さまいらっしゃいませ、いつも感想いただきありがとうございます(^^)

そーなんです、私もひとごとじゃないので買ってしまいましたよ、anan「断捨離」特集号。
でも買っただけで浄化された気分になり、何もしてないのですが^^;

きっと英二は「これはジャパニーズ・ソウルフードなんだ」とかてきとーなことを言って、アッシュにカツ丼食わせてたような気がします。
オイスターバーでは「太りたくない(=メインはいらない)」とかヤワなこといってたアッシュも、英二の手料理なら喜んで完食してたんじゃないでしょうか。

URL | 東雲 #- | 2010/10/11 23:32 | edit

初めまして。とても面白かったです。 

初めまして。hinataと申します。
アレックスの英二に対してのほのかなトキメキ(?)が凄く可愛いかったですv断捨離とかカレンキングストンとか流行ってますよね。かくいう自分も捨てまくり中です(笑)
これからも素敵なバナナ創作書いてくださいね。応援しています。

URL | hinata #bhhZubZs | 2010/10/11 23:56 | edit

Re: 初めまして。とても面白かったです。 

はじめてのご訪問ありがとうございます、hinataさま。
カレンキングストンの本、借りて読みましたよー!
私はモノは少ないほうだと思うのですが、いかんせん本が捨てられなくて…
でも出版不況の昨今、うっかり本を捨てるとすぐ絶版になり、あとあと後悔するんですよねぇ。
何をかくそう、以前の引越しで黄色いBANANAくんたちを手放し、今回の大回転で文庫を改めて揃え直しました。トホホ…
ファンの風上にもおけない奴ですが、よろしければまた遊びにいらしてください。

URL | 東雲 #- | 2010/10/12 21:03 | edit

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