07 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.» 09

Quiet Day

「BANANA FISH」二次元妄想小説サイト。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Posted on --/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

TB: --    CM: --

--

AIMM -前編- 

 ※「877」キリ番リクエストSS。お題は『アッシュが笑っている話』です

クリスマスが間近にせまったその日。
珍しくアッシュが昼前に目覚めたのは、玄関口の騒がしさのためだった。

「だからさぁ、悪かったって…」
「機嫌直せよ、な?」
にぎやかにさえずるやかましい声。

アッシュは目をこすりながら、
パジャマ姿のままのそのそとキッチンへ向かった。
そこへ、憮然とした表情の英二が入ってくる。
「…英二?」
寝ぼけた声で呼びかけると、
英二はちらりとアッシュを見やり、ぷいと横を向いた。

え?

いつも笑顔をむけてくれる友人の思わぬ素っ気なさに、
アッシュの眠気がいくらか吹きとんだ。

「ああ、ボス! ちょうどよかった」
「英二がヘソ曲げちゃってさぁ~」
アレックス、ボーンズ、コングの三人組が、口々に言いつのる。
普段なら、寝起きのアッシュには決して話しかけようとしない奴らだ。
どうやら、英二のご機嫌がななめの理由は、
こいつらにありそうだった。

「…いいから、何があったか言ってみろ」
アッシュが寝起きのかすれ声で、
つまりは地を這うような不機嫌な声で言ってやると、
三人はぴたりと口を閉じた。

「あー、つまり…」
おそるおそるアレックスが口を開く。
「英二が下のスーパーにクリスマスの買い出しに行きたいっつーから、
荷物もちでつきあったんだよ。
で、買い物が終わったら、その…
奥のヤドリギのとこで待ち合わせようと」
「…ヤドリギ?」

おい、待て。
それは。

「したら英二、すっげぇの!」
ぷぷぷ、と吹き出しながらボーンズが口をはさんだ。
「もう、買い物帰りの奥様たちがわらわら寄ってきちまって!
次から次へとつかまって、キスされまくりでさぁ~」
「ほんと、モテモテだったよなぁ、英二!」
コングがにやにやしながら、そっぽを向く英二の肩をバンと叩いた。

アッシュは複雑な心境だった。
ヤドリギの下にたたずむ、人待ち顔の童顔な少年。
奥様がたにはきっと、ふ化したての小鳥のヒナのように見えただろう。

ひとことでいうなら、『スキだらけ』。

「いやぁ、おまえは日本人だから、そんな習慣知らないよなぁ」
「うんうん、オレらがうっかりしてたよ。いや、ほんと反省してる!」
「だからそろそろ機嫌なおせよォ。
クリスマスのご馳走、つくってくれるんだろ?」
「…クリスマスのメニューは、ごはんと納豆と冷たいトーフです」
英二が陰気な声で告げた。
「それは、キリストの苦難を知るために役立つでしょう。
また、健康を保つためにも。
そしてあなたがたは知る、友人をあざむく、それはいけないこと」
「えええええー」
三人から一斉に悲鳴があがった。

「なんだよ、その嫌がらせのようなメニューは!!」
「アメリカ式のご馳走つくるって張り切ってたじゃん~。
しかもなんか、片言になってるし!」
「黙ってないで、アッシュからも何とかいってやってくれよ!」
「…それは私のビジネスではありません」
「ボスまで!!」

それからしばらくアレックスたちは、
ヘソを曲げきった英二のご機嫌とりに四苦八苦する羽目になった。


そして、クリスマスの日がやってきた。
朝から出かけていたアッシュは夕刻になって帰宅し、
リビングの変わりように目をみはった。

数日前からそこに置かれていたモミの木は、
ぴかぴかしたボールやモール、天使の人形、
それに本物のリンゴで飾り付けられ、
またたく何色ものライトの中で、見違えるように輝いていた。

キッチンから運ばれたテーブルにはきれいなテーブルクロスがかけられ、
何枚もの皿とナプキンがセットされていた。
これから並べられるクリスマスのご馳走を待つように。

カーテンレールには赤・緑・白の薄紙がよじってまきつけられ、
壁にはクリスマス・リースが飾られている。
そして部屋のあちこちにおかれた、大小さまざまなキャンドル。

リビングの真ん中で呆けたように立っていると、
英二がキッチンから顔をのぞかせた。
「おかえり、アッシュ! 早かったね」
「…すごいな。これ全部、おまえがやったのか?」
「まさか。アレックスたちが頑張ってくれたんだ。
料理の下ごしらえも、ずいぶん手伝ってくれたよ」
笑いをこらえるような声。
どうやら、クリスマスのご馳走にありつくために、
あの三人は労働力を差し出したらしい。

「で、あいつらは?」
「ああ、ワインが足りなそうだからって買いにいったんだ。
みんなが戻ってきたら、食事にしようね」
楽しそうに言って、英二はキッチンに戻っていった。
その笑顔につられるように、
アッシュもいつになく心が浮き立つのを感じた。

英二が用意したクリスマスのご馳走は、すばらしいものだった。
ビーフとトマトとルッコラがあえられた温製カルパッチョ。
鯛とアサリと色とりどりの野菜の蒸し焼き。
えびとマッシュルームのクリーム煮。
マスカルポーネチーズとほうれん草のペンネ。
そしてもちろん、ローストターキーとジンジャークッキー。

「生ハム、回してくれよ」
コングがもぐもぐと口を動かしながら言った。
「チーズも。あ、そのクリームで煮たやつも」
「まずその口の中のもんを腹に入れろよ」
ボーンズがコングをこづき、勢いよくターキーにかぶりつく。

アレックスたちだけでなく、アッシュも食べに食べた。
キャンドルのあかりに浮かぶ、
英二と仲間たちの輝くような笑顔。
今まで生きてきた中でいちばんすばらしい食事で、
きっと一生忘れないだろう。

やがて彼らはソファに移動し、コーヒーを飲んだ。
英二がキッチンから切り分けたチーズケーキを運んでくる。
「はい、これはデザート。
チーズケーキなら、きみも食べられると思って。
…きらいじゃないよね?」
「ああ、生クリームは駄目だけど、チーズケーキは好きだぜ」
「よかった!」
ほっとしたように英二が笑う。

アッシュがとまどうのは、いつもこんな瞬間だ。
誰かが自分を気遣い、何かをしてくれようとするのは、
いつも夢のように懐かしい、遠い光景だった。

「クリスマスが年に一回しかないってのは、
じっさい残念だよな」
コングがさっそくケーキをほおばりながら言った。
おかしなことに、アッシュも同じ気持ちだった。

それから五人はしこたま飲んだ。
ワインのボトルが何本も空けられ、
リビングには乾杯の声と明るい笑い声が満ちあふれる。

英二からは、クリスマスプレゼントも用意されていた。
ひとりにアルバムを一冊ずつ。
それは、NYへきたときから英二がこつこつ撮りためた
彼らの日常を切り取ったスナップだった。

「ああー、この店、覚えてるぜ!」
「うへぇ、オレ変な顔でうつってんな~」
「安心しろよ、おまえはいつもそんな顔だ」

三人はお互いのアルバムをのぞきこみながら、
楽しそうにページをめくっている。
アッシュも面映い気持ちで、焼き付けられた過去の自分を見つめた。

寝ぼけているアッシュ。
本を読むアッシュ。
川で大物を釣り上げ、得意げなアッシュ。

そこに写っている彼は、圧倒的に笑顔だった。
レンズの向こうにいる人に向けられた、無防備な笑み。
アッシュは、自分がこんな表情で笑うことを初めて知った。

一心にアルバムをめくっていると、
ページのあいだから一枚の写真がはらりと落ちた。

「ん?」
「あーっ、そ、それはダメ!!」
落ちた写真を見とがめた英二が、悲鳴のような声で叫んだ。
アッシュの眉がはね上がる。

そういわれて、すんなり渡すわけにはいかないだろう。

アッシュはすばやく写真を拾い上げ、
高々とさし上げてじっくりながめた。
それは、彼が窓辺に腰かけているショットだった。
眠るような横顔を、朝陽がやわらかく照らしている。

「なんだよ、オレにくれたんだろ。いい写真じゃないか」
「駄目だってば! それは返して!!」
とびつこうとする英二を軽くいなし、アッシュは写真を裏返した。
右上がりの筆記体で書き込まれた、四つのアルファベット。

「 “AIMM”…? どういう意味だ?」
「落書きだよ、ただの!!」
叫ぶと英二はぴょんとジャンプし、
みごとアッシュの手から写真をもぎとった。
「あ、おい!」
「これは間違い! うっかりまぎれちゃっただけだから。
欲しいなら、こんど焼き増ししたげるよ」
「それより、どういう意味だよ、それ」
「だから落書きだってば! 意味なんかないよ」

アッシュはじっとり英二をながめた。
そわそわと落ち着かない視線が、『それは嘘です』と告げている。

だが結局、アッシュがなだめてもすかしても、
英二はがんとしてその文字の意味を教えようとはしなかった。


next >

Posted on 2010/12/23 Thu. 10:08 [edit]

category: BANANA FISH(創作)

thread: 二次創作小説(版権もの  -  janre: アニメ・コミック

TB: --    CM: 2

23

コメント

うゎー、うれしいです。 

バナナFANとして、そして皆さんの創作を心待ちにしている身として
本当に参加出来てよかったです。
そして前後編のうれしいサプライズ!!

私も英二がアッシュにあげたアルバム欲しいです。(笑)
英二は本当にお母さんみたいですよね。
リンクス一家に英二お母さんが居ないと一家団欒は成り立ちませんからね。
後編も楽しみにしています。

URL | michi #- | 2010/12/23 23:31 | edit

Re: うゎー、うれしいです。 

こちらこそ、今回はとても楽しいチャレンジの機会を与えていただき、
どうも有難うございました!
少しでも楽しんでいただけたのなら、私もとても嬉しいです♪

ハリポタ新作でハリーとハーマイオニが踊るシーンがすごく気に入って、
アッシュと英二までダンスをするハメになりました。
拭いきれないうす暗さは、このブログの持ち味ということでひとつ大目に…(おい!)

URL | 東雲 #- | 2010/12/24 01:14 | edit

Comment
list

コメントの投稿

Secret

Comment
form

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。