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Quiet Day

「BANANA FISH」二次元妄想小説サイト。

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AIMM -後編- 

夜もふけて、ますます酔いが回った仲間たちは、
なぜか英二にダンスを教えようとしはじめていた。

「まったく信じられねぇな。
ダンスが踊れなくて、どうやって日本人は女を口説くんだ?」
「だから口説いたことなんかないよ、悪かったね」
こちらもいいかげん酔ってるらしい英二が、
アレックスにひっぱられるまま、右へ左へあやしいステップを踏んでいる。

床にすわりこんだボーンズとコングが、けらけら笑いながらヤジをとばした。
「よしいけ、アレックス!」
「よっしゃ、もうちょっと右でヤドリギの下だぜ!」
「あーっ、あのクリスマス・リース…きみたち、また!!」

にぎやかな彼らのやりとりを、
アッシュはだらしなくソファに寝そべって、ただながめていた。

夜半を過ぎたころ、三人組はふらふらになりながら
リンクスたちとの別のパーティに顔を出すために、いとまを告げた。
口々に「メリークリスマス!」と叫びながら。
それぞれ自分のアルバムを大事そうに抱えて。

「やれやれ、やっと静かになったな」
「ほんとだね。ちょっと気が抜けるくらい」
急に人気のなくなったリビングに、ふたりの声だけがやけに大きく響く。
そのがらんとした静けさが、今夜だけは何故かさびしく感じられ、
アッシュはラジオのスイッチを入れた。
とたんに、明るいオールデイズのナンバーがあふれ出す。

「…そういや、おまえ、ステップは覚えられたのか?」
「そんなの、見てたならわかるだろ。
ひっぱり回されただけで、なんにも教えてもらえなかったよ」
「オレが教えてやろうか」
「ええ? きみ、踊れるの?」
英二が目を丸くした。
「ああ、タコおやじの家にいたころにダンス教師がついて、
ひと通りたたき込まれたぜ」
「へぇえ…」
「アホづらしてんなよ。ほら、教えてやるから」
アッシュが優雅に手をさしのべる。
英二は目をぱちくりさせ、
やがてはにかんだように笑って、その手をとった。

「前に出した足と反対の足を交叉させて、また右…
よし、上手いじゃないか」
「そ、そう?」
英二は真剣な面持ちで、足元を見ながらステップを踏んでいる。
じっさい、彼は覚えがよかった。
運動選手だっただけに、反射神経がいいのかもしれない。

少し余裕ができたのか、踊りながら英二が話しかけてきた。
「こっちのクリスマスは、静かだよね」
「日本のクリスマスは違うのか?」
「うーん、日本ではお祭りのひとつになってるからね。
にぎやかだよ、街も、家も」
彼の目が何かを思い出すように、やさしく細められた。

「ああ、でもニューイヤーの日は日本もこんな感じかな?
人も車も減って、静かに新しい年を迎えるんだ」
「ふーん、日本ではクリスマスより新年のほうが宗教的なのか」
「うん、新年になると、みんな神様にお願いしにいくんだよ。
新しい年も自分や周りの人が健康で、幸せでありますようにって」
「八百人の神様にか?」
「よく覚えてるね、アッシュ!」
英二がうれしそうに言った。

「そう、なんたってぼくの地元は神様の本場だからね。
新年は格別な雰囲気だよ」
「なんだよ、神の本場ってのは」
「と、特別な場所ってことだよ!」

だからさ、と英二はにっこり笑った。
「いつか年末に日本へいこうよ、アッシュ。
そしてぼくの故郷で、一緒にニューイヤーを迎えよう」
「ああ…いいな、それ」

約束の地。

英二の楽しげな笑顔を見つめながら、
アッシュは静かに胸の中でささやいた。

オレに約束の地は必要ない。
神も、許しも必要ない。
オレにはただ、おまえだけが必要だ。

わかっている。
こんな関係はまともじゃない。
自由を奪い、閉じ込めることでしか
身の安全を保障してやれないなんて。

でももう、アッシュは英二の自由を愛せなかった。
自由になったら、やがて彼は去って行くのだろう。
この薄汚れた街から。
薄汚れた人生を送っていない、誰かのもとへ。

アッシュは英二の手首を引き上げ、
音楽にあわせてくるりと回した。
英二が目をみはり、クスクス笑い出す。
アッシュの好きな、誰かにくすぐられているような明るい笑い声だった。

アッシュも笑った。
彼が自分のそばで楽しそうに笑っているのが、ただ嬉しくて。

音がふたりを包み込んだ。
彼らは笑いあいながら離れ、
旋回し、
また相手に近づいた。
触れあうほどそばへ。
互いの息が感じとれるほどに。

いつか、曲はセンチメンタルなバラードに変わっていた。

 その切なさは昔ながらの想い
 幾千の恋人たちの目に浮かび、消えていった涙

英二の大きな黒い瞳の中にキャンドルの炎が映り、
明るく輝いている。
アッシュは、間近でその揺れる光を見つめた。
祈るように。

もし、おまえが目の前から消えてしまったら、
どうしたらいいのかわからない。
だから、オレのそばにいてくれ。
どうか。

 時代が移り、時がゆき過ぎても
 いつの日にも

“いつの日も”

その歌詞に、ふいにあの写真の走り書きの意味がひらめいた。

「なぁ、あの写真の裏の文句、もしかして…」
アッシュは英二の耳もとに口を寄せ、
ある言葉をささやいた。

英二が、はじかれたようにアッシュの顔を見上げる。
たちまちその頬に赤い色がのぼり、
やがてうつむくようにコクリとうなずいた。

やっぱり。

アッシュの胸に、泡のように何かが生まれた。
それは、とてもやわらかくてくすぐったい、
きれいであたたかなものだった。

「…ねぇ、それ、やめてくれないかな」
「へぇ? 何を?」
「そのにやにや笑い!」
英二はヤケになったように、アッシュの胸を軽く突いた。
「いたた、乱暴だなぁ、オニイチャン。聖なる夜に、暴力はよそうよ」
「そんなに力いれてない!」

ムキになる英二の肩を笑いながらつかまえ、
アッシュはそのやわらかい頬に、
かすめるような、小さなキスを、した。

ヤドリギのリースの下で。

「こりないねぇ、オニイチャン?」
「ア…ア…アッシュ~~~」
面白いように、英二が耳まで赤く染まっていく。
「ああっ、どうしたの、顔が真っ赤!」
「アッシューー!!」
じたばたと暴れる英二をつつき回しながら、
アッシュは弾けるように笑い出した。
幸せで、息がつまりそうだった。

そうやって彼は、
自分のちっぽけな思惑など軽々ととびこえ、
光に満ちた知らない世界を見せてくれるのだ。

愛を。

外はしんと静まり返り、冷たい木枯らしが吹いている。
でもこの部屋の中はとてもあたたかくて、
キャンドルの灯りで淡いオレンジ色にかがやいていた。
そして、空気の色さえ染め変えていく、やさしい音楽。

その夜、間違いなくアッシュは
NYで最も幸福な人間のひとりだった。


A・I・M・M

Always in my mind.

━いつも、ぼくの心に

END

Mistletoe Kiss

< back


以前読んだ海外ミステリで、男の子が双子の妹に贈ったフレーズが忘れられず、
今回使わせていただきました。
どうぞ皆様も良いクリスマスを!

Posted on 2010/12/24 Fri. 00:10 [edit]

category: BANANA FISH(創作)

thread: 二次創作小説(版権もの  -  janre: アニメ・コミック

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24

コメント

Merry Christmas! 

新作『AIMM』、最高のクリスマスプレゼントでした!

東雲さんのお話が醸し出す空気感、本当に好きです。
何だろう…… 何がこんなに好きなんだろう……
もう分析し切れないくらい、全部が好きですv

浮かれてはしゃぐ子分3人も、
それに参加はしないけれど、機嫌良く眺めるアッシュも
本当にらしくって。
アッシュにとって、もちろん1番は英二なんでしょうけど、
この3人も、ただの仲間、という存在を越えた、
大事な存在なんだろうなぁと思いながら読ませて頂きました。

アッシュが英二をリードしながら踊るダンス、見てみたいなぁv
このほんのひと時の幸せな時間、
アッシュには全てがキラキラと輝いて見えたことでしょうね。

と、ところで……
「またかよ!?」と思われそうなんですが。。。
アッシュが英二にダンスを教える、というネタ、
実は私も書きかけであったりします~ ^^;
やっぱり映画に影響されて。
私の場合は『レインマン』でした。
弟が、自閉症の兄にダンスを教えるシーンがあるんですよ。
ネタがかぶってショックというより、東雲さんと同じ事考えてた自分が
何やら嬉しいですv(キモくてすみません >_<)

AIMM、素敵な言葉ですね。
東雲さんも、どうか素敵なクリスマスを過ごしてくださいね☆

URL | 芙月 #YVWDSDMY | 2010/12/24 22:34 | edit

No title 

素敵なお話をありがとうございました。

連載当時はアッシュの強さばかりに心が囚われていましたが、
今、読み返すと自分にとってアッシュがかわいそうな子になっていました。
自分もいい大人になったんでしょうね。
それで少しでもアッシュが心から年相応に笑っていてくれたらと思い、
リクエストさせて頂きました。

皆がこの聖なる夜に幸せでいられるように祈らずにいられません。

出雲旅行、楽しんできてくださいね。

URL | michi #- | 2010/12/24 23:47 | edit

温かいお話ですね! 

アッシュと英二は、仲間も一緒に幸せなクリスマスを過ごしたんですね。
よかった。私も、読んでいて幸せな気分になりました。

英二がみんなにアルバムをプレゼントしたのは、いかにもありそうですね。
アレックスとのダンスシーン、それからアッシュとのダンスシーンも、かわいかったです。
アッシュ、英二の頬にキスできて、よかったですねー。(うちのベイビーズ、大喜び!)

素敵なクリスマスプレゼントを、ありがとうございました。

URL | yukino #- | 2010/12/24 23:49 | edit

素敵な素敵なお話を読めて幸せな気持ちになりました! 

A×英の素敵なクリスマスのお話が読めてとても幸せな気持ちになりましたv
アッシュが本当に幸せそうで。
ダンス!!アッシュと英二のダンスvv
(そしてアレックスと英二のダンス!!!!…やっぱりアレックス→英二は
良いものですね。)
ダンスシーンの事で頭がいっぱいです!
もうどうしたら良いのかわからないくらい頭がいっぱいです。(笑)

これからも素敵なお話の更新楽しみにしています。

URL | hinata #mQop/nM. | 2010/12/26 00:32 | edit

遅くなりましたが、Merry Christmas! 

あああ、芙月さん、
私たちまたシンクロしたのですね?!
これはもう、ある種の愛があるのではないかと!
(少なくとも私にはありますよ、ええ!!)

いつもこちらが感動してしまうほど丁寧な感想をいただき
ほんとにありがとうございます(T_T)
今回の話は三人組参加パターンのほかに、
アッシュと英二ふたりきりのパターンも考えたのですが、
アッシュが大勢で楽しいクリスマスを迎えたことは
今までの人生でなかったんじゃないかと思って、にぎやか路線になりました。

そして、アッシュと英二が踊るシーン、芙月さんもみたいですよね?!
なんと、それをかたちにしてくださったかたがいらっしゃるんですよ~
いま絶賛公開交渉中なので、今しばらくお待ちくださいね!

URL | 東雲 #- | 2010/12/27 00:01 | edit

ありがとうございました! 

リク主さま、前編&後編ともにコメントをいただきありがとうございます(^^)
私も、かつてはひたすらかっこいいスーパーヒーローだったアッシュが、
ハマリ直すたびにどんどん切なく感じるようになりまして…
今回はそんな彼が楽しく幸せなクリスマスを過ごせるよう、
至らぬながらがんばってみました。
何しろ、油断するとすぐ暗い方向へいってしまうので^^;
私の根が暗いせいですね…orz

はじめてのキリ番リクエスト企画でしたが、
参加していただきほんとにありがとうございました。
この場を借りてお礼申し上げます<(_ _)>

URL | 東雲 #- | 2010/12/27 00:03 | edit

温かいコメントをありがとうございます♪ 

いつもやさしい感想コメントをいただいて、
こちらこそプレゼントをいただいた気分ですよ~(^^♪

今回は一歩も外へ出ないひきこもりな二人でしたが、
私が書くと、外へ出てもなんかNYというより、新宿・歌舞伎町なニオイが…
yukinoさんのお話はいつもどこかアメリカンテイストがきいていて、
ほんとにNYで生きてる彼ら、という感じがして憧れます。

来年はそこんとこをどーにかしたいと思っておりますので、
どうぞよろしくお願いします、師匠!!

URL | 東雲 #- | 2010/12/27 00:07 | edit

ダンス!! 

ええ、hinataさん、ダンスですよ!!
いま、ダンスが熱いんです、局地的に!!(笑)

アレックスは酔っ払ってソファで寝ちゃって、
A×英のほっぺにキスを目撃してガーン…みたいな展開もいいなーと思ったのですが、
とにかく時間&筆力がなくて、泣く泣く退場してもらいました。
で、でも、とにかく彼も踊りましたから、ええ!!

このにわかダンスブームをBANANA界にひろめるためにも、
ぜひ例の件をよしなに…<(_ _)>

URL | 東雲 #- | 2010/12/27 00:08 | edit

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