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Quiet Day

「BANANA FISH」二次元妄想小説サイト。

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ハッシャバイ 

※『甘い爆弾』の前・後編の間に入る番外編です

「じゃあ、その件はケインに伝えとくよ…ボス?」

まだ夜が明けきらない午前5時。
終夜営業のカフェテリアの窓からみえる街並みは、
モノクロ映画のようにくすんで見える。

アレックスの報告を受けていたはずのアッシュの視線は、
はす向かいの交差点に注がれていた。

アレックスがボスの視線をたどると、
小柄な人影が街灯によりかかるようにしてぼんやりたたずんでいた。
どうやら、信号が変わったことにも気づいていないらしい。

英二だ。

親切な車が軽くクラクションを鳴らしてやり、
やっと我に返ったらしい英二は、あわてたように横断歩道を駆け出していく。
アレックスはほっとしてそれを見守っていたが、
あと一歩で渡りきるというところで、彼は縁石につまずき、コケた。

あああ…
心の中で、アレックスが悲痛な声をもらす。
英二はジーンズのヒザをはたきながらどうにか立ち上がり、
車の窓から心配そうに身を乗り出したドライバーに
大丈夫というように手を振っていた。

「なあ、アッシュ…」
アレックスはそわそわとビニールソファから腰を浮かした。
英二は手を振った姿勢で、その場に固まっている。
どうやら、立ったまま寝ているらしい。
アッシュが眉間のシワを指でおさえた。
「…連れて来い」
アレックスは弾かれたように、店を飛び出していった。


「ずっと仕事だったのか?」
「うん。人のいない時間帯に、タイムズ・スクエアで撮影しなけりゃならなくて。
もう30時間近く、起きっぱなしだよ」
英二はふぁああとあくびをしながら、カフェテリアの席についた。
その目が、空席におかれたままのカップに注がれる。
中には、まだコーヒーが半分ほど残されていた。

「彼、いたの?」
アレックスは、困って視線を泳がせた。
このさい、何もいえるわけがない。
英二はぼそりとつぶやいた。
「逃げたな」
いたたまれず、アレックスは大声で追加のコーヒーをオーダーした。

最近は、いつもこうだった。
アッシュは誰よりも先に英二を見つけ出すくせに、
決して彼と向き合おうとせず、さっさと逃げ出してしまう。
いつも取り残される自分やボーンズやコングは、
気落ちする英二の姿に何ともいえない気分にさせられるのだ。

『ったく、恨むぜ、ボス』
向かいの席で、泥のようなコーヒーをおとなしくすすっている姿を
ちらりと見る。
こうやって向き合って話すのは、ずいぶんと久しぶりだ。

思えば、英二が現れたころのアレックスは、
アッシュの片腕として忙しく動き回っており、
彼と時間を過ごすことはほとんどなかった。
文句もいわずカゴの鳥状態におさまっていることから、
内気でおとなしい奴だと単純に思い込んでいたのだ。

まったく、とんでもねぇ勘違いだったよな。
アレックスは苦笑した。

「何?」
英二がとろんと眠たげな目でこちらを見る。
「いや…おまえ、もう帰ったほうがよくねぇか?
なんだったら、車で送ってやるぜ」
「まだへーき」
眠気のせいか英二はどこか舌足らずで、
それが妙に可愛らしかった。

彼との距離が近づいたのは、皮肉なことにアッシュの不在がきっかけだった。
何の説明もないまま、ボスが全てを投げ出すように姿を消してから、
大人しく部屋にこもっていたはずの彼は、それこそ豹変したのだ。

チャイナタウンに乗り込んで、チャイニーズの王子様に喧嘩を売ってくる。
コルシカ・マフィアのパーティを強襲する計画を立て、
銃の撃ち方を教えろと迫る。

こんな奴だったのか。
あのころのアレックスは、日々驚きをもって彼をながめていた。

むちゃくちゃで、もどかしげで、命がけだった英二。

見ているだけで、なんだか胸がわくわくした。
こいつといれば、決して退屈はしないと確信するようなあの気持ち。
あとになってから思い当たった。
それは、彼がアッシュと知りあったころの感覚にとてもよく似ていたのだ。

ためらいがちに、英二が口をひらく。
「…最近、彼はどう? 元気?」
「ああ、別に変わりはねぇよ。この頃はやっかいごとも少ねぇしな」
「そっか」
英二はほっとしたように目を細めて笑った。
やわらかい笑顔だ。
その顔をみていると、不思議な、軽い痛みが胸にきた。

残念だな、アッシュ。
あんたはきっと、こいつに負ける。

愛する人が目の前にいるのに、ただ見守っているのはむずかしい。
遠く離れたところから幸せを祈るより、きっとずっとむずかしい。
だからあとは、たぶん時間の問題だ。

向かいの席で、英二のまぶたはほとんどくっつきそうになっている。
アレックスは微笑んだ。
英二は無鉄砲で、絶望的に銃がヘタで、
なのに強気で、最高だった。

「おら、立てよ。送ってやるから」
「ン…まだ大丈夫だよ」
「いいから、しっかり歩け。
オレはおまえんちのあたりの道には明るくねぇんだから、ちゃんと案内しろよ」
急き立てながら、後部座席に英二を放り込み、
アレックスはゆっくり車を出した。

きょうはボーンズやコングを誘って、久しぶりに飲みに繰り出そう。
そうしたら、この胸の痛みもきっと消える。
彼らのように寄り添える相手をいまだ持てない、このさびしさも。

光がおぼろにさしこみ、本格的に眠り込んでしまった英二の顔を照らしている。
カメラを持たないアレックスは、その姿をただ心に刻みつけ、
頼りなく、不確かで、透き通るような夜明けの街を走り抜けていった。

END


「Hush-a-bye(ハッシャバイ)」は、『おやすみ』とか『ねんねんころり』みたいな意味だそうです。

Posted on 2011/04/25 Mon. 22:59 [edit]

category: BANANA FISH(創作)

thread: 二次創作小説(版権もの  -  janre: アニメ・コミック

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コメント

最強英二^^ 

こんにちは!
今作はアレックス視点ですね。いつも新鮮で、かつバナナフィッシュの世界そのもので感動します。
私は、東雲さんの描かれる英二が大好きです!
自然体で、ちょっと惚けてるけどあったかくて芯があって。
これぞ英二!!
”「最高だった」byアレックス”ですよv
英二好きにはたまりません。
アッシュを「彼」って呼ぶのもいいですね。

夜の雰囲気も素敵です。
すごーくセンスのいい、「もう一回見たい!」って思っちゃう映画仕立てのCMを見せてもらった気分・・・て表現は分かりにくいですか;
気持ちのよい作品を読ませていただいて、ありがとうございました^^

URL | きいろ #tNbAf7jk | 2011/04/26 19:27 | edit

Re: 最強英二^^ 

わー、コメントありがとうございます、きいろさん!
今回、アッシュの出番は冒頭にちょびっとだけで、
あとはアレックスと英二の会話のみという地味なシチュエーションだったので
反応をいただけてすごく嬉しいです(^^)

そして英二を好きといっていただけて、とても光栄です♪
彼は原作でもどこかとらえどころのない印象があるのですが、
私は下水道チェイスのときの英二がすごーく好きで。
とくに「あやまるなよ。日本人のおカブを取る気かい?」
「行こうぜ、ボス!」のくだりですね!
あのユーモアと、きっぱりした男の子らしさをなんとか表現できないもんかと
いつも試行錯誤し、そして破れさっております…(T_T)

お忙しいところ素敵なコメントをいただきありがとうございました。
また今度、サイトにお邪魔させていただきますね~

URL | 東雲 #- | 2011/04/26 23:33 | edit

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