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Quiet Day

「BANANA FISH」二次元妄想小説サイト。

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夜よ 夜よ 

「チルドレンズ・タイム」「チルドレンズ・タイム ~その後~」の続編です。
 チラリとですが文末に性的描写があるので、苦手な方はご注意を。


「よくでられたな、ブタ箱から」
「…知ってんだろ、ほんとは。人が悪いよ」
英二は目の前のやたら聡い金髪の友人を軽くにらんだ。

会えなかった互いの日々をさぐり合う会話。
だが彼が相手では、どうにも分が悪い。
ごまかすように、英二は大味なのり巻きをもうひとつつまんだ。
TVの画面では経済ニュースが流れている。

彼の死を伝えるTVニュース。
あのときの衝撃は忘れられない。
あの瞬間、英二の体のどこかが空ろになり、からっぽになった。
まるで肺から空気が、血管から血液が流れ出たかのように。

そして否応なく思い知らされた。
自分にとって彼を失うことはもはや不可能な、受け入れがたいことなのだ。
それに比べたら、ユーシスにナイフを向けるほうがずっとやさしかった。

━そんなこと、目の前の彼には決して言えないけど。

「ちょっと、ビールとってくるよ。飲むだろ?」
「ああ、英二」
アッシュが声をかけた
「ついでに教えてくれよ。そのアザはどうした?」

あまりに何気ない口ぶりに、英二の反応が一瞬遅れた。

「…アザ?」
「とぼけるなよ。
隠しもしないで、オレが気づかないとでも思ったのか?」

アッシュが立ち上がり、ゆっくりと近づいてくる。
口角だけ引き上げた冷たい笑顔で。
それは見慣れた、だが決して英二に向けられたことはない、アッシュの表情だった。

素早くアッシュの手が動き、カットソーの襟ぐりをぐいと押し下げる。
英二の左鎖骨の下に散らばる、うす赤いいくつかのアザ。
その反対側の胸元深くに、もうひとつ。

きしんだようなアッシュの声。
「これは?」
「これは…」

わかったよ、降参だ。
やっぱりきみに隠し事はできないね━
気軽に伝えるはずだった言葉は英二の喉にひっかかったまま、どうしても声にならなかった。

アッシュの翡翠のように冴えた緑の瞳が、真っ赤に燃え上がるかのように見えた。
「…っ誰にっ…やられたっ…?!」
唸るような声と共に、首の付け根がきつく締め上げられる。
その苦しさに英二が小さく咳込むと、我に返ったように圧迫する力がゆるんだ。

「誰にやられたんだ、英二?」
「…教えようがないよ。知らない奴だったんだ」
「シンか?」
「まさか、違うよ! シンは、気づいて助けに…」
「あいつの仲間なんだな」

英二は自分が墓穴を掘ったのに気づいた。
アッシュは焼きつくしそうな目で英二をねめつけ、さっと身をひるがえした。
テーブルに置かれていた銃を、素早くポケットにねじこむ。

「待って、アッシュ! どこ行くんだよ?!」
「お前には関係ない」
「関係あるよ! チャイナタウンに乗り込む気だろ?!」
「わかってるなら、そこをどけ」
「いやだ!!」

ふたりは玄関口でにらみあった。
英二は息を吸い、つとめて落ち着いた声を出そうとした。

「…何もなかったんだよ。
喧嘩を売られて、ぼくは自力で勝った。それだけのことなんだ。
きみが出ていくような話じゃない」
「喧嘩に勝った? ハッ、レイプされかけたの間違いだろ」
「同じことだよ。あれは…ただの暴力だった」

否応なく記憶がフラッシュバックする。
早口の聞き取りにくい英語。
頬にかかる、アルコールと煙草が混ざった息のにおい。

『いい子にしてろよ』
しゃがれた声でささやいて、あの男は片手で英二の口をふさいだ。
あの、汚れた爪━

わきあがる嫌悪感に、英二の顔が一瞬ゆがむ。
それをアッシュは見逃しはしなかった。

「…ぶっ殺してやる」
怒気もあらわに吐き捨て、アッシュは今度こそ英二を押しのけてドアを開けようとした。
ああもう。

「ダメだ、絶対に!!」
英二は全力でドアノブをつかんだ。

「やっと帰ってきたばかりなのに! 絶対に行かせないからな!!」
「英二、いい加減に…!」
「いい加減にするのはきみだよ! どうしてわからないんだ?!」

じれったさに、英二は地団駄を踏まんばかりだった。

「ぼくがどんな思いであのニュースを見たと思ってるんだ!
きみが死んだなんて聞かされて、どんな気がしたと?
あのときからずっと、きみが生きてるのかさえわからなかった。
ぼくが、どんな気持ちで…!」

まぶたの裏がちくちく痛む。
我慢しろ我慢しろ、ここで泣き出すなんて最悪だ。
英二は必死に自制心を取り戻そうとした。

「…あんな変態、もうぼくはとっくに忘れた。
死のうが生きようが、どうだっていい。
大切なのはきみのこと、きみが生きてここにいるってことだけだ」
「そういう問題じゃない」
どこか呆然と英二の爆発を見守っていたアッシュが、やっと口を開く。

「ああいう手合いは、必ず同じことをやる。
弱いとみくびっていた相手に反撃されて、ビビって大人しくなるとでも思うか?
そいつは、きっとまたおまえを狙う。
今度はもっと用心深く、周到に」
「シンがいるよ。彼は、部下の暴走を許さない」
「へぇ、随分とあのガキを信用したもんだな」
アッシュは目を細めた。

「おまえのシンへの信頼はともかく、オレは自分のやるべきことをやる。
身内に手を出されて、黙ってるようなボスはいない」
「ぼくはきみの部下じゃないよ、アッシュ。きみの友だちだ」
「そんなことわかってる!」
アッシュは苛立たしげに髪をかき回した。

「どうしてわからない、おまえを守るためだ!
一回逃げ切ったからって、次もうまくいくと思ってるのか?
身を守るためには攻撃するしかないんだ!」
アッシュは英二の顎をつかみ、乱暴に上向かせた。

「おまえは銃もナイフも使えない。
だから、オレが代わりにやる。
そのクソ野郎に、生まれてきたことを必ず後悔させてやる」
「…きみがそうやってぼくを守ろうとするように、ぼくもきみを守りたいんだよ」
英二は彼の怒りに気圧されないよう、瞳に力をこめた。

「嫌なんだ。せっかく帰ってきたきみが、また厄介事に巻き込まれるのが。
しかもそれが、ぼくが原因だなんて」
「厄介なんて思ってねぇよ」
「わかってる。でも、そう感じてしまうんだ」
「英二、もしユーシスに何か言われたなら…」
「違うよ。これは、ぼくの感情」
英二は小さく笑った。
顎にかかったアッシュの指をそっと外す。

「きみの感情は、違うね?
きみは…報復したがってる。
ぼくが忘れても、きみは絶対に忘れないし、絶対に許さない」

それがジャングルの掟なのか、それとも別の何かなのか。
英二にはわからなかったが、それでも自分たちのあいだに横たわる緊張感には気づいていた。
彼らの友情や信頼に関わらず、確かにそこに存在する張りつめた何か。

「おまえには、わからない」
アッシュがひびわれた声で言った。
「欲望のかたちも、その意味も、何ひとつ」

玄関のスツールに腰をおろし、顔を落とすようにうつむく。
「おまえにはわからないんだ」

玄関のスポットライトの淡い灯りが、彼の目に反射する。
英二がひそかに宝石より綺麗だと思っている鮮やかな緑の瞳が、ブルーに、灰色に、金色に、さまざまに色を変えた。

整いすぎた容姿に宿る、飼い慣らされない野生の心。
炎のような、このこわれもの。
ぼくが自分自身より大切だと思う、たったひとりの人。

今、ぼくが踏み出したら、何かが決定的に変わり、失われてしまうのかもしれない。

だけど、ぼくは知りたい。確認したい。
ぼくらのあいだに存在する、この火花は何なのか。

英二はアッシュの前にかがんで、彼と額を合わせた。
「ぼくが知らないなら…きみに教えてほしいよ、アッシュ」
ささやいて、前髪ごしに彼の額へそっとキスした。

さっとアッシュが顔を上げる。
信じられないという表情だ。
ふたりは至近距離で見つめ合った。
英二は意志の力だけで目をそらさずにいた。

「!!」

いきなり世界が反転する。
アッシュが英二をひっさらうように抱きかかえ、床に倒れ込んだのだ。
体を起こす間もなく、食いつくされるような激しいキスが降ってくる。

二人にとって、本当の夜が始まろうとしていた。


この話の続きは、具体的な性描写を多く含んでいます。
18歳以上で、彼ら二人の性的描写に不快感をもたない方のみ、こちらからお進み下さい。
なお、話の性質上、Web上の公開ブックマークには登録なさいませんようお願いいたします。

Posted on 2015/10/24 Sat. 08:02 [edit]

category: BANANA FISH(創作)

thread: 二次創作小説(版権もの  -  janre: アニメ・コミック

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