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Quiet Day

「BANANA FISH」二次元妄想小説サイト。

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トーフサンドのレシピ 

おとなしく家にひきこもって押入れの整理などしていたら、
かなり昔の雑誌の切り抜きを見つけました。

早々に廃刊してしまった、まんが好きな女子向けの生活情報誌だったと思うのですが、
その雑誌の「まんがに出てくるおいしそうなメニューのレシピ再現!」みたいな特集に、
BANANAの『トーフサンド』が出ていたんです。
あまりにも懐かしくて、思わずPDFファイル化しちゃいました。
それがコチラ↓

◎ トーフサンドレシピ ◎

掲載時にさっそくつくった覚えがあるのですが、
豆腐の水切りが充分じゃなくて、いまいちな代物になったような記憶が^^;
ああ、料理の面でも英二に教えを乞わなくてはならないのですね。
なんか屈辱だわ…

近々、材料を用意してリベンジしてみようと思います。
お気が向かれた方は、ぜひぜひトライを♪
クッキングのスローガンは「打倒、英二!」ってことでひとつ!
(いえ、ファンなんですよ、ホント…)

Posted on 2011/03/27 Sun. 22:30 [edit]

category: 雑記(BANANA FISH)

thread: 管理人日記  -  janre: アニメ・コミック

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27

ピースメーカー 

そのカフェは、刑事が決して行きつけにはしないたぐいの店だった。

フローリングの床はワックスで磨き抜かれ、
天井は配管がむき出しになっている。
テーブルと椅子は、たぶん東洋のアンティークなのだろうが、
彼の目には田舎のくたびれた中古家具にしか見えなかった。
流れている音楽は、突き抜けた明るさのタイ・ポップス。

彼はあきれて首を振った。
やれやれ、これが今どきの流行りってわけなのかね?

小柄なギャルソンが、静かな声でオーダーをとりにくる。
その瞳が彼を認め、大きく見開かれた。
彼はにっと笑って、手をあげた。
「やあ。久しぶりだね、英二」
「…ジェンキンズ警部」
小さな声で彼の名前を呼び、お久しぶりです、と頭を下げる。

ああ、そんな礼儀正しさは変わらないんだな。

いっそ痛ましい思いで、ジェンキンズはその東洋人の少年を見つめた。


ホットコーヒーをすすりながら、ベンチでぼんやりと時間をつぶす。
15分ほどたったころ、公園の入り口からジャケットをはおった英二が
こちらへ走ってくるのが見えた。

「…すみま…せん、お、待たせ、して」
息を切らせながら謝るのに、大きく手をふる。
「いや、こっちこそ仕事中に時間をとってもらって、すまなかったね。
店のほうはいいのかい?」
「ええ。ピーク時間はすぎたし、ちょうど休憩だったから」
「そうか」

ふたりは並んで腰かけた。
英二はわざわざ、ジェンキンズのぶんもランチボックスを持参していた。
有難くいただくことにしたが、カフェのオリジナルらしいそのキッシュは
彼にはあまりに薄味すぎた。

「…うーん、健康になってしまいそうな味がするよ」
「それ、あまり美味しくないってことですよね?」
英二が小さく微笑む。
その横顔を、気づかれないようにそっと観察した。

初めて会ったときは、あまりにも幼いその容姿に驚いたものだが、
この大きな黒い瞳のもつ光は印象的だった。
好奇心と、意志の強さをあらわす強い瞳。
あとで、日本ではそれなりのスポーツ選手だったと聞き、
ひとり納得したものだった。

いまの英二は、あの頃の彼の影のようだった。
目の前にいるのに、ひどく遠い場所にいるように見える。
手をのばして触れたら、輪郭がぼやけて消えてしまいそうだった。

「…アッシュのことは、気の毒だった」
ジェンキンズはいきなり切り出した。
英二の体がビクリと震えるのがわかり、
彼の胸は憐れみでいっぱいになった。
ではこの名前は、いまだに彼の心をするどく切り裂くのだ。

「…私がはじめて彼に会ったとき、あの子はまだ15か16だったかな?
ちょうどオーサーをやりこめて、ボスの座についたころだ」
ジェンキンズは静かに語り始めた。

「暴行と傷害でひっぱってきたんだが、
少し話しただけで恐ろしく頭のきれる子だとわかったよ。
それでまあ、少々説教をしちまったんだ。柄にもなくね」
照れたように頭をかく。

「せっかくこれだけの頭脳をもちあわせているなら、
きみはそれをこの境遇から抜け出すために使うべきだとか、
このままじゃいつかこの街でのたれ死にするだけだとかね。
まあ、いま思うとあまりにもありきたりな台詞のオンパレードで、我ながら泣けてくるよ」
「…彼はなんて?」
「うん、今でも忘れられないよ。
彼はこう言ったんだ。
『それでいいのさ、オレの夢はどこかの街角で虫のようにくたばることだからな』とね」
ジェンキンズはぬるくなったコーヒーをひとくち飲んだ。

「強がりのように聞こえるよな?
でも、あの子はまったく気負わずに淡々とそういった。
それでわかったんだ、これは彼の本心なんだと」

英二の目が揺らいでいた。
そう、彼ならきっとその意味がわかるだろう。
アッシュがあのディノ・ゴルツィネのもとで、
どんな思いをしてきたかを知っている彼なら。

「自由であること。
それが彼にとって何よりも優先すべき、大切なことだったんだろう」

もっとも、きみに会ってからはその優先順位も変わったようだが。
心の中で、ひそかにそう付け加える。

「さて、ここからが本題だよ。
きみは、最近のダウンタウンをどう見る?」
「え?」
「もちろん、あそこが危険な街であることは変わりない。
だが、アッシュが彼らを束ねていたころとは、明らかに違うんじゃないかな」

英二は思い当たったようだった。

「グループ同士の争いが増えました。
とくに、あの…中国人と」
「そうだね。いまやリンクスとチャイニーズの反目は、
無視できないところまできている」
ジェンキンズはうなずいた。

「先週、チャイニーズの少年が重傷を負って、病院にかつぎこまれた。
幸い、命に別状はなかったがね。
右手の腱は切れていて、回復不可能だそうだ」

彼はナイフも銃も、持つことが出来なくなるのだ。
それは、ストリートでは死を意味する。

「もちろん、原因は明らかだ。
チャイニーズは、ダウンタウンのカリスマの命を奪ったんだ。
リンクスたちは、当然報復をしたい。
だが、ショーターのことがあるからね。
チャイニーズたちだって、決して黙ってはいない」
ジェンキンズは首を振った。

「私はおそろしいんだよ。
あの街に、またどれだけの血が流れるのかと思うと。
それもまだ年端も行かない、ほんの子どもたちの血だ」
「…わかります。でも、それをぼくに聞かせてどうするんです?」
「それは、きみが彼らをつなぐ、たったひとつのかけ橋だからだ」
ジェンキンズは、しっかりと彼を見つめた。

「きみはアッシュの親友だった。そして、シンの友人でもある。
きみはアメリカ人じゃなく、かといって中国人でもない。
きみの言葉なら、きっと両方のグループが耳をかたむけるだろう」
「ぼくが?」
英二はおよそ彼には不似合いな、ひきつったような笑みを浮かべた。

「ぼくに何ができるっていうんです?
ぼくは何ひとつできなかった。今だってそうだ。
もしぼくに何かできたのなら━」

それ以上は言葉にされなかったが、ジェンキンズはその先を正確に続けることができた。

━彼を死なせはしなかったのに、と。

「英二。それでも、きみは試すべきなんだよ」
「…無理です」
「いいや、きみにはその義務があるんだ」

ジェンキンズは、ふとその先を続けるのをためらった。
自分が明かそうとしている事実は、彼を追いつめるだけじゃないのか?

「アッシュの検死報告書は、きみに見せたね。
だけど私らはひとつだけ、きみに隠していた」
「え?」
「きみはアメリカを発つ前に、彼に手紙を書いたね?
あの手紙は証拠物件として押収され、その後、シンに返却された」

英二が雷にうたれたように、こちらを見返した。
ふるえる声で問いかける。

「…なんで、あれが証拠物件なんです?」
「それは、あの手紙がアッシュの死亡現場にあったからだ。
いや、正確にいうなら、ラオに刺されたとき握りしめていた手から落ち、
その後、彼自身の手で運ばれたんだな。
鑑識が、刺殺現場の土の付着を確認している」

心臓が、一拍鼓動を止めた。
そんな目で、英二は呆然と彼を見ていた。

「刺されたあと、アッシュは地面に散らばった手紙を拾いあつめた。
そのころには、身体をかがめるだけで大変な苦痛を強いられたはずなのに」
「…やめて下さい。聞きたくない!」
「いいや、きみは聞くべきだよ」

そう、彼は知るべきだ。
あのたぐいまれな少年が、どれほど彼を愛していたかを。

「いいかい、アッシュは残された力をふりしぼって、きみからの手紙を拾った。
そして図書館に入り、手紙を読みながら、静かに死んでいったんだ。
虫のように道ばたで死ぬのが夢だといっていた、あの子がだよ?」

ジェンキンズは英二の肩をつかみ、まっすぐ視線をとらえた。

「あの子は愛する場所で、愛情に包まれて、最期のときを迎えた。
彼は、人間として死ぬことを選んだんだ」

英二の顔に表情はなかった。
大きく見開かれた黒い瞳は、闇につながる空洞のようだ。
届いてくれ。
彼は、祈るように語りかけた。

「生きのびたものには責任があると、私は思ってる。
何かできることがあるはずなんだ、
逝ってしまった者に報いるために。
ただ悲嘆に暮れているだけなんて、あんまりお粗末じゃないか」

ジェンキンズはゆっくりとベンチから腰を上げた。
「さて、こちらもそろそろ仕事に戻らなけりゃな。
キッシュ、ごちそうさん。うまかったよ」

返事を期待してはいなかった。
英二もただ黙って、彼の背を見送っていた。


それから二ヶ月も過ぎた頃。
いきなり強くなった陽光に目をほそめながら、
ジェンキンズは朝はやく市警に出勤した。

年を重ねるごとに、春が苦手になる気がする。
暴力的なまでの生命のパワーに押されてしまうからだろうか。
彼はため息をついた。

今や、ジェンキンズは後悔していた。
あの少年は、見るからに傷つき、打ちひしがれていた。
あれは告げるべきではなかったのだ。
自分がやったことは、傷を負って立ち上がることができない人間に、
新たな重しを背負わせたようなものだった。

「うわっ!」
ロッカールームに足を踏み入れたとたん、何かぐんにゃりとしたものを踏みつけた。
そこには、チャーリーがでろんとだらしなく床にのびていた。

「おい、チャーリー!
おまえさん、こんなところで何やってんだ?」
「あー…」
目をぱしぱしとまばたき、チャーリーはふわぁあと盛大なあくびをした。

「…おはようございましゅ、警部。いやぁもう、大変な夜で」
「大変? 何か大事件でもあったのか?」
「いや、そういうわけじゃないんですが。
とにかく、一晩中電話がなりっぱなしで、もう」
「うん?」
「ストリートギャングのガキどもが、夜っぴいて騒ぎまくったんですよ」
笑いながら、少年課のナリス刑事が口をはさんだ。
こちらも、目は真っ赤だ。

「それも、どうやらリンクスとブラック・サバス、
チャイニーズが全員集合したようで。
でかいクラブを貸し切ってひと晩中大騒ぎで、近隣住民からの苦情が殺到ですよ」

ジェンキンズは息をのんだ。

「まったく、あいつらときたら何考えてるんだか。
ついこないだまで、血相変えていがみあってたっつーのに…警部?」
「ナリス、確認したいんだが。
夕べの通報に、傷害事件はあったかね?」
「ええっと…確かないはずですよ。ほとんどが騒音と、器物損壊です。
酔っ払って調子づいた奴らがガラスを叩き割ったとか、まあ可愛いもんですよ」

ジェンキンズは、自分の口もとがどうしようもなくゆるんでいくのがわかった。
では彼は、どうにかやってのけたのだ。

「うう、濃いコーヒーが飲みたいっス。
警部、よかったら朝食をつきあいませんか? おごりますよ」
「悪いな、チャーリー。
きょうはひとりで祝杯をあげたい気分なんだ」
「へ?」

ジェンキンズはさっそうと彼に背を向け、
きびきびとした足どりで自動販売機へ向かった。
コインを投入すると、迷わずホットチョコレートのボタンを押す。

「あーっ、警部、だめですよ! そんなん飲んだら、また糖尿が…」
「だまってろ、チャーリー。きょうは特別なんだ」

きっぱり言って、非常階段へ向かう。
階段の踊り場に出ると、ドアを閉め、街をながめた。
彼は、ここから見るNYの街がいちばん好きだった。

紙コップの中身をひとくち含んだ。
口の中に甘い甘い禁断の味が広がる。
うっとりとそれを味わいながら、ジェンキンズは英二に思いをはせた。

あの子の傷が癒えることは、おそらくないだろう。
彼らの結びつきは、それほど深いものだった。

彼は大きな欠落を抱えながら、これからも生きていく。
そして、きっと乗り越えるだろう。
それだけの強さが、彼にはある。
あの小さなピースメーカーには。

ジェンキンズは微笑み、紙コップを乾杯のようにかかげた。
この空の高みのどこかにいるはずの少年に向かって、呼びかける。
「アッシュ。おまえさんの親友は、なかなかどうして大したもんじゃないか」

そのとき、あの金髪の少年の誇らしげな笑い声が聞こえたような気がした。
きっと空耳だろう。
それでも、ジェンキンズは耳をこらした。
だが、その声は二度と聞こえなかった。

まるで、春のそよ風にさらわれるように静かに。
誰にも気づかれず、そっと消え去ってしまった。

END


小説インデックスページに「ジェンキンズ警部視点」と説明を入れながら、
なぜか爆笑しそうになりました。
それでも、この話はアッシュ×英二なんです。ええ、誰がなんと言おうと!

Posted on 2011/03/21 Mon. 20:09 [edit]

category: BANANA FISH(創作)

thread: 二次創作小説(版権もの  -  janre: アニメ・コミック

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21

地震 

この週末、日本は大きな地震に見舞われました。

東京在住の私は、地震発生時には職場にいて、会社から自宅まで歩いて帰りました。
その後、TVやネットで飛び込んでくるニュースはあまりに凄惨で、
「犠牲者は一万人以上に」などという報道を聞くにつけ、
何か自分にできることはないのかと焦燥感ばかりつのりました。

きょうは献血センターに行ったのですが、大変な人込みで、
「受付から完了まで2時間以上かかりますが、いいですか?」と聞かれました。
結局、平日の空いている時間帯に出直すことにして、
今日は赤十字へ寄付だけして帰りました。

現実的に、私がいまできることは、
寄付、献血、節電、そして日本の社会人としてしっかり働くこと。
そのくらいしかないのですね。
それなら、自分ができることを精いっぱいやっていこうと思います。
このブログも続けます。
そうして、必要なときには出来るかぎりの力を尽くせる人間でありたい。
そんな風に思ってます。

余震が続き、被災地ではまだ不安な夜が続いていると思います。
どうか一刻も早く、おだやかな夜が訪れますように。
皆さんと、皆さんの大切な人たちが無事でありますように。
被災地の皆様のご無事を、心よりお祈りいたします。

Posted on 2011/03/13 Sun. 22:07 [edit]

category: 未分類

thread: 地震  -  janre: 日記

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13

甘い爆弾 -後編- 

その日、アッシュの機嫌は最悪だった。

それは降りしきる雪のせいでもなく、
悪天候の中、わざわざ出かけた図書館が
雪のため早々に閉館になったせいでもなかった。

彼は行きがけに、通りでタクシーをつかまえる英二を見たのだ。
正確には彼と、彼の友人を。

その男は英二のルームメイトで、このところ彼といるのをよく見かけた。
やさしげな面立ちの、茶色い巻き毛の青年。
そいつと英二は、トランクをタクシーに積みながら、楽しそうに笑いあっていた。
たぶん、この休暇の相談でもしているのだろう。
アッシュは道を挟んだこちら側から、そんなふたりを見ていた。

NYに戻ってきた英二は、何度もアッシュをたずねてきたが、
アッシュは徹底的に彼を拒絶し続けた。
彼の脳裏には、銃弾の前に倒れた英二の姿が
まだどうしようもなく焼きついていた。

自分は疫病神だ。
関わる人間に、災厄しかもたらさない。
たったひとりの親友と二度と会えない苦しさくらい、
彼の命に比べたらどれほどのものだろう?

だから、これでいい。
あいつは新しい生活を始めたんだ。
そう自分を納得させようとしても、
心はどうしようもなく彼のもとへ帰っていった。

あいつは冬の休暇を、あの巻き毛野郎の家で過ごすんだろうか。
いや。
アッシュはふいに別の可能性に気づいた。
もしかしたら彼らはいっしょに日本へ…
英二の家へ行くのかもしれない。

その考えは、思いがけないほどアッシュの心を切りつけた。
英二を突っぱね続けたのは自分だ。
裏切られたような気分になるのは、このさい間違ってる。
それでもあれは、自分と彼だけの大切な約束だった。

━何もかも終わったら、いっしょに日本へ行こう━

そのとき、アッシュの心をよぎったのは自分の部屋だった。
豪華で、整然とした、誰もいない部屋。
自分はそこへ帰るのだ。
待つ人のいない、誰かを迎えようともしない、からっぽな部屋に。

アッシュは立ち止まった。
もう一歩も足を踏み出せそうもなかった。

おまえと共に生きられない。
おまえなしでも生きられない。

雪が降りやまない。
風も強まるばかりだ。
もしかしてこれは、吹雪ってヤツじゃないのか?

そのとき、人っこひとりいない道の向こう側から、歩いてくる人影があった。
白いダウンジャケットにぐるぐるとマフラーをまきつけ、
ちょっと見、ちいさなスノーマンのようだった。
この大雪を楽しんでるのか、さくさくと雪をふみしめる足元が
妙にリズミカルにはずんでいる。

物好きな奴。

斜めに降りしきる雪のすきまから、
その踊るような人影が英二だと気づいたのは、
ふたりの距離が10メートルほどまで近づいたときだった。

やがて英二がふと顔を上げ、アッシュに気づく。
ふたりは同時に立ち止まった。
互いに触れあうこともできない、ぽっかりとあいた空間をはさんで。

「…おまえ、友だちと旅行へ行ったんじゃなかったのか」
「え、なんで?」
英二はきょとんとした。
「…ああ、もしかしてタクシーに乗るところ見たの?」
あれは見送り。
英二はさらりと言った。

「雪で飛行機が遅れそうだから、見送りがてら
空港での時間つぶしにつきあってくれって頼まれたんだ」
「…ずいぶん甘えた野郎だな」
「じっさい、5時間も遅れたんだよ?
それに、ランチもお茶もおごってもらって、ぼくはちょっと得したな」
屈託なくいうと、英二は首をかしげた。
「…きょうは、逃げないんだね」

アッシュは答えなかった。
でも、その場を立ち去ろうともしなかった。
この世でたったひとり、心から愛している人から逃げ回るのが、
いいかげん馬鹿馬鹿しくなっていたのだ。

ふたりは距離を保ったまま、
相手をうかがうように、ただそこに立っていた。

何を言おうか。
アッシュはぼんやり思った。
英二に伝えなければいけないことが、たくさんあったような気がする。

ただ共に生きるということ。
それが自分にはどんなに困難で、難しい仕事なのかを言おうか?
それとも、あの病室のベットに横たわったおまえの白い、
白すぎる顔を忘れることができないと?

でも、口をついて出たのは別の台詞だった。

「おまえは、いつかきっと、後悔するときがくる」
英二がわずかに目をみひらいた。
「オレの人生に染みついた血の臭いに
息がつまりそうになる日が、きっとくる」

アッシュの意思に関係なく、言葉は勝手にあふれ出た。
それは間違いなく、彼の心の奥底に眠っていた本音だったのだ。

「英二、オレは…そのときがこわい。こわいんだ」
それはおまえにとっての破滅ではなく、
オレにとっての破滅だから。

英二は何も言わなかった。
ただ黙って、こちらを見ていた。
ぐるぐる巻きのマフラーで半ば隠された顔からは、
その表情をうかがうことはできない。

やがて彼は手をのばすと、柵につもった雪をひと掴み取り、
手遊びをするように両手でまるめた。

「!!」
アッシュは反射的に体をよけた。
英二がいきなり素早いモーションで、彼に雪玉を投げつけたのだ。
よけたところへ、さらにもう一球。
こちらは頬をかすめるぎりぎりのところをとんでいった。

「よけるなよ! 当たらないだろ!」
「よけるだろ、普通! なんだってんだ、いったい?!」
「なんでだって?!」

英二は両手で雪をひっつかむと、雪玉に丸めることもせずに
めちゃくちゃに腕をふり回してこちらへ投げつけてきた。

「っ…おい、英二!」
「ぼくは地球を半周して、ここへ戻ってきたんだぞ!!」
英二が怒鳴った。
「母さんには泣かれた!
妹には、二度と帰ってくるなって言われた!
なのにきみは、そんな離れたところから
ぼくが後悔するのがこわいなんて言ってる!!」

アッシュは一瞬立ちすくんだ。
その期を逃さずに投げられた雪のかたまりが、
彼の顔を正確にヒットする。
「…っぷ」
口に入ってしまった雪を吐き出そうとする間も許さず、
英二が次から次へと雪球を投げつけてくる。
これはたまらない。

「ああ畜生、いいかげんにしろよ! こっちも本気だすぞ?!」
「出せよ! 本気になればいいだろ!!」
英二が叫びかえす。
あの大きな瞳が、怒りで燃えるようにきらめいていた。

つかの間、ふたりはにらみあった。
次の瞬間、猛烈な勢いで、ふたりは雪玉を投げはじめた。
白い雪がさながら爆弾のように、猛スピードでふたりのあいだを飛び交う。

「このっ!」
「ぶっ…顔ばかり狙うなよ、きたねぇぞ!」

英二は小柄なぶん、的が小さい。
そのうえ、彼はまったく容赦なかった。
むしろアッシュは、その長身とためらいがあだになり、
圧倒的な反射神経をもちながらも、苦戦していた。

「あっ、まず…」
英二があせったように口走る。
アッシュがぎりぎりでかわした雪玉が、
ゆっくりとうしろから歩いてきた人影にあたったのだ。

その長身の老人は、わずかに顔をしかめると
胸元で砕けた雪を上品な手つきで払った。
「やあ、この寒いのに元気がいいね、ボーイズ。
でも歩道で雪合戦はよくないよ。
どうせやるなら、公園にでも行きなさい」
「うるせぇ、じじい!」
この窮状が、見てわからないか。

「アッシュ!! お年寄りになんてこと言うんだ!」
「って、おまえ…」
アッシュは脱力した。
いったい、誰のせいだと…!

「すみません、ミスター。ちょっと友人とふざけてたんです」
英二はにっこり微笑むと、かるく一礼した。
その笑顔と礼儀正しいしぐさに、老人の心がとろかされるのが見えるようだった。

「いや、気にしなくていいよ。
若い人たちには、この大雪も面白いアクシデントなんだな。
年を取ると、つい忘れてしまう」

風邪をひかないように、楽しみなさい。
そう声をかけ、老人は帽子のひさしに優雅に手をやり、立ち去っていった。
残されたふたりは毒気を抜かれ、顔を見合わせる。

「あーあ、服のなかまでぐっしゃぐしゃ…」
「…それはオレの台詞だ。おまえ、容赦なくやりやがって」
「雪合戦で手かげんなんてできないよ。
それにぼくは、本気で怒ってたんだし」
あっさりという英二の顔に、もう怒りの色はなかった。

「きみは、自分が思ってることをいったよね。
だから、ぼくも言うよ」
思わず身構えるアッシュに、英二は淡々とした口調で告げた。
「もう、ぼくを遠ざけないでほしいんだ。
きみのほうから離れていこうとしないで」

彼は言った。
とても静かに。

「きみが好きだよ、アッシュ。きみがいないと、さびしいよ」

その言葉に、彼の心の中で何かが屈した。
アッシュはくちびるを噛みしめ、空を仰いだ。

降参だ。
お手上げだ。

向けられたのが怒りや失望ならば、きっと自分は対処できた。
でもこの無防備なまでの愛情を前に、
彼はなすすべをもたなかった。そう、何ひとつ。

「帰ろう、アッシュ」
雪で濡れてしまった手袋を外し、英二は右手を差し出した。
「ここは寒いよ。ぼくはもうへとへとだ。
きみもそうなら…一緒に帰ろう」

差し伸べられた手。
そのとき、雪も街も立ち消え、世界は彼と自分だけになった。

この日を、いつか後悔するのかもしれない。

彼を傷つけ、自分も傷つき、
おそれていたように、いつかお互いを失う日がくるかもしれない。
それでも、いま、差し出されたこの手を取らずにいられない。

アッシュは、そっと英二の手を握った。
小さな手だ。
とても、強い手だ。

あのころ、どんな最悪なことがあっても、
この手があれば切り抜けられるような気がしてた。
自分の人生にさえ光や愛はあると
心から信じさせてくれた、あたたかい手だった。

「…腹減った。なんか食わせてくれよ」

その言葉に、英二はパッと陽がさしこむように笑った。
それは、あの病院での別れ以来はじめてみせた
彼の心からの笑顔だった。

「じゃあ、ぼくの部屋においでよ! ビーフシチューがあるんだ」
「シチューか、うまそうだな」
「うん、山ほど煮込んであるよ。
ほら、休暇中はずっとひとりで部屋にこもる予定だったからさ」
それを聞いて、アッシュの胸はかすかに痛んだ。
彼はここへ戻ってくるために、大切な家族を切り離してきたのだ。

その疼きに気づいたかのように、
英二がいたずらっぽい目でこちらをのぞきこんだ。
「シチューを食べさせてあげるお礼に、
今度こそ一緒に日本へきてくれるよね、アッシュ」
「え?」
「大いに期待してるからね。
きみがその魅力を発揮して、母さんと妹をうまくまるめこんでくれるのをさ」
「…まかせとけ。
おまえの代わりに、ドゲザでもハラキリでも何でもしてやるよ」
「きみ、ほんとに伊部さんから間違った日本文化を吹き込まれてるよね」

あきれた顔をしてみせながら、英二の目はやさしく和んでいる。
思い返せば、彼はいつもアッシュをこんな目で見ていた。
まるで、何かとても良いものを…大切なものを見つめるように。

その眼差しの前で、今こそアッシュは自由だった。
どこにだって行けるし、何だってやれる。
迷いも孤独も、あの白い爆弾に吹きとばされた。
英二が投げた、甘い爆弾。
すべて粉々に砕け散り、残されたのはひとつの覚悟だ。

罪も、痛みも、後悔も、
何もかも引き受けて、生きる。
彼と生きる。

ふたりは笑いながら、横殴りの雪が降る街を駆け出した。
手をつないだ腕をいっぱいに伸ばして。

それははばたく羽のようで、
地上に舞い降りる鳥の旋回のようで、
降りしきる雪をさらって、軽やかに吹き抜けていった。

つもった雪のうえに、ふたりの足跡がどこまでも続いていく。
やがて雪がその跡を吹き消し、うめつくしてゆくころ、
NYの街にそっとやさしく夜の帳が下りた。

END

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原作のすきまを妄想でうめる、喪黒福造的なスタンスでやってきた私ですが、
初のパラレルはとても楽しかったです!
あ、英二のルームメイトは、『彼』に出てきた名無しくんです。パラレルなので、ちゃんと仲良しになりました。

Posted on 2011/03/01 Tue. 23:35 [edit]

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01

甘い爆弾 -前編- 

※パラレル。「アッシュが死ななかった未来」

3年前、彼は年上の保護者と共に、その空港へ降り立った。
未知の国への、はちきれそうな期待を抱えて。

いま、彼はひとりでそこにいた。
ジョン・F・ケネディ国際空港。
同行者は、いない。
迎える人もいない。
それでも、彼の心はあの頃と同じように浮き立った。

急ぎ足で行き来する人を見渡し、その空気をそっと胸に吸いこむ。
からりと乾いた、どこかスパイシーな香りがする独特な空気。

ああ、変わらない。
彼は微笑んだ。
この地を離れてから、一年あまり。

奥村英二は、再びNYへ戻ってきた。


安手のホテルにチェックインすると、
英二はすぐ街へ飛び出した。
やらなければならないことがたくさんある。
会わなければならない人たちも。

それでも、まず何より先に彼に会いたかった。
財布にいつも入っている写真の中から、
挑戦的な目でこちらを見つめている少年。
彼に会うために、英二ははるばるこの国へ戻ってきたのだ。

贈った航空券が、使われることはなかった。
何度も書いた手紙に、返事がくることも。
伊部を経由してマックスから聞いた話によると、
アッシュは自分とはもう二度と会わないといっているらしい。

あの意地っぱり。

英二はぎゅっと口もとを引きむすんだ。
構やしない。
そっちが来ないなら、こっちから行くまでだ。

たどりついた高級アパートメントの最上階の窓を、挑むように見上げる。
退屈そうに玄関前にたたずんでいたドアマンの目が丸くなった。
「英二?! なんてこった、ずいぶんひさしぶりじゃないか!」
「お久しぶりです。クリス、いますか?」
「ああ、きょうはまだ見かけてないから、いると思うよ。
今回は旅行かい?」
「いえ、またNYに住む予定なんです」
「ほーぉ! じゃあ、またここへ戻ってくるんだね?」
「うーん、ぼくはそう望んでるんですけど」
どうなることやら。
うれしそうに話しかけてくるドアマンに微笑み返しながら、
英二はこっそり胸の中でつぶやいた。

エレベーターが止まり、開いた扉の先には、
ふかふかのカーペットが敷きこまれた廊下が広がっている。
ひとつのドアの前で立ち止まった英二は、大きく息を吸い込み…
インターフォンのドアベルを力いっぱい押し続けた。

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン…

ドアのこちらからも、ベル音が部屋の中で
やかましく反響しているのが聞こえる。
やがて、苛立たしそうな足音がこちらへ近づいてきた。
ドアが勢いよく開かれる。
「うるせぇ!! ったく、どこのガキ…」
罵声の後半は、喉の奥にのみこまれた。

凍りついたようにこちらを見返す、エメラルド・グリーンの瞳。
すらりとした長身、光を宿す金色の髪。

「アッシュ」
名前を呼んだ。
それだけで、胸がいっぱいになった。
一年分だけ大人になった彼が、そこにいた。

彼の手が無意識のようにこちらへ伸ばされ、ふいに動きをとめる。
そのまま固くこぶしを握りこみ、アッシュは顔をそむけた。
「…帰れ」
「え?」
「帰れ!! なんでまたここへ来た?!」
悲鳴のような声。
驚いて見返す英二に、彼は抑えた声で言い直した。
「…もう二度とここへは来るな。いいな?」
英二の返事を待たず、目の前でバタンとドアが閉められた。
その間、およそ30秒。

「…一年ぶりの再会としては、あんまりじゃないかな?」
英二はぼそりとつぶやいた。
やがて気を取り直したように、もってきた紙袋の中身を
ごそごそとドアの前に並べ始める。
ソバの乾麺。納豆のパック。アポロチョコ。エンゼルパイ。天使のキャラメル…
ずらりと並べられたみやげ物の列は、
さながらあやしい宗教の供物のようだった。
英二はその出来映えに満足し、立ち上がった。
「アッシュ、おみやげここに置いていくよ! きっとまた来るからね!!」
ドアの向こうに大声でよびかけ、エレベーターホールへ戻る。

自分が去ったあと、彼がドアをあけると同時に、
あの品々は廊下のあちこちに散乱することだろう。
3分とたたずに降りてきた英二を見て驚くドアマンに、
英二はにっこりと笑いかけた。
とびきりの笑顔で。


「…で? これからどうするって?」
チャイナタウンの小さな中華料理屋。
その薄汚れたカウンターで、英二はアレックスとシンと並んで
トリソバをすすっていた。

「まあ、こういう展開は覚悟してたからさ、ちゃんとホテルもとってあるよ。
あ、すみません、ギョーザ追加」
「ホテル? そんなん、金がもたねぇだろ。オレんち泊まれよ」
「おまえんとこだと、あのあんちゃんにすぐバレないか?
なんだったら、うちにきてもいいんだぜ、英二」
なつかしい友人ふたりのあたたかい申し出に、
英二は胸が熱くなった。

「ありがとう、でも明日はマックスのところに行かなくちゃ。
アルバイトを紹介してもらう約束なんだ」
「おまえがバイト? 何やるんだ?」
「写真スタジオの雑用だって」
「へぇ、おまえ、まだ写真やってるのか」
「うん、今回はそれも目的のひとつなんだ。
ちゃんと本腰入れて、NYで写真の勉強をしようと思って」

そう、もう自分は決めたのだ。
どこでもないこの街で、彼のそばで、生きていくのだと。

━アッシュの顔、こわばってた。
本当にぼくに会いたくなかったんだ。

英二はくじけそうな心を奮い立たせるように、
運ばれてきたギョーザに勢い良くかぶりついた。

負けるもんか。

こんなの、とっくに慣れっこだ。
だてに、あの皮肉屋の意地っ張りとつきあってきたわけじゃない。
どんなにアッシュに拒まれても、逃げ帰ってなんかやらない。

心はいつでも、ひとつのところへ帰っていく。
どこにいても、何を見ても、胸は同じ言葉をくりかえしささやく。

きみと一緒にいたい。

誰といても、この傷のような痛みは消えない。
あたりまえだ。
どんな人も彼ではないのだから。
世界中でただひとり、彼だけがこんなに大切だ。

いつも未来について話すのを避けていたアッシュ。
英二はいつだって、彼に約束がしたかった。
明日のこと。来月のこと。来年の…
ずっと先のことを。

「すみません、チャーハンとエビチリください!」
「…おまえ、食いすぎじゃね?」
どこかヒキぎみの友人たちを尻目に、
英二はトリソバのスープを一滴も残さず飲みほした。
どん、と丼をカウンターにおく。

さあ、ここからは根比べだ。

英二は、ぜったいに負けない自信があった。

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Posted on 2011/02/27 Sun. 17:07 [edit]

category: BANANA FISH(創作)

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27

チルドレンズ・タイム ~その後~ 

シンは沸騰した頭を抱えて、おんぼろビルの階段を駆け下りた。
金髪の少年の恫喝が、頭の中を何度もこだまする。

『何もするな!!』

畜生、畜生、畜生。

シンは歯ぎしりした。

手を貸そうとしたのだ、自分は。
それが、今は亡きボスの望みでもあると信じてた。
なのに差し出した手は、無造作に叩き落されたのだ。
よけいな世話だと、おまえでは役不足だと、
暗にそう告げながら。

「おい、なに血相かえてんだ。何かあったのか?」
「うるせぇよ」
心配げに声をかけてくるラオを無視して
シンがバイクのエンジンをかけようとしたとき、
アッシュと英二が連れ立って階段からおりてきた。

「ちょっと待ってて!」
英二はそうアッシュに呼びかけると、
まっすぐこちらへ走ってきた。
「シン!」
「なんだよ、でけぇ声で…って、おい!」
とびついてきた英二に、シンは思わずよろめいた。

「ありがとう、シン」
「…何がだよ?」
「何もかも。ぼくにしてくれたことも、
アッシュにしてくれようとしたことも、みんな」
「あー…」

シンの視線が宙を泳ぐ。
さっきまでの怒りが、あっけなく霧散していくのがわかった。
どうもこいつが相手だと、調子が狂う。

「ま、いいってことさ。気にすんな」
仕方なしに、シンは英二の背中をかるくたたいた。

「英二、何やってる! 帰るぞ!!」
アッシュの鋭い声がとぶ。
英二が大声で叫び返した。
「待ってて! すぐ行くから!」
「ひゃー、おっかねー…」
肩をすくめ、シンは英二の目をのぞきこんだ
「おまえ、大丈夫か?」
「え? なにが?」
「それだよ、それ」
シンはあごをしゃくって、彼の胸元から見え隠れするアザを示した。
「事情をおおっぴらにしないってのは了解したけどな。
あのでたらめにカンのいいあんちゃん相手に、
おまえ、それを隠し通す自信あんのかよ」

英二は真剣な目つきで、それを検討しているようだった。
やがて肩をすくめ、あっさりと言った。
「ないね」
「ないって…」
シンは脱力した。
何をのんきな。

「アッシュのカンのよさは、特別だからね。
ぼくはポーカーフェイスが得意じゃないし、
きっとあっさりバレちゃうんだろうな」
「…また、ずいぶんとあきらめがいいんだな」
思わず皮肉な口調になった。
オレをさとした時とは、えらく態度が違うじゃねぇか。

「あのときはアッシュがいなかったから、
誰かが早まったことをするかもって心配だったんだ。
でも大丈夫。アッシュは戻ってきたし、
彼はきみたちとコトを構える気なんてないさ」

楽観的な英二の言葉に、シンは素直にうなずけなかった。
たしかに、アッシュは自分たちと小ぜりあいを起こしているほどヒマじゃないだろう。
それでも、目の前でのどかに笑っている少年に関しては、
彼の耐性をかなり低めに見積もるべきだと、シンの本能が告げている。

その懸念を裏付けるかのように、通りのほうから殺気だった声がとんだ。
「英二!!」
「いま行く!」
英二は叫び返すと、
「ほんとにありがとう、シン」
最後にぎゅっとシンを抱きしめ、そちらへ走っていった。

シンが目で追うと、通りの正面につけられた車に
アッシュが英二と乗り込もうとしていた。
そのあからさまに苛立った顔つきに、
ふと、シンの中にいたずら心がわいた。

シンはそのままぶらぶらと車に近寄ると、かがんで英二に呼びかけた。
「英二、バイクに乗りたくなったらいつでも来いよ。
また後ろに乗せてやるぜ」

そのセリフに、アッシュの眉が正直につり上がる。
英二が嬉しそうに、窓から身を乗り出した。

「うん! …でも、ほんとにいいの?」
「おう。いつでも来いよ」
「ありがとう。きっとまた来るよ!」
「何グズグズしてんだ、早く出せ!」
アッシュがいまいましそうに、運転席に向かって吐き捨てた。
アレックスがあわてて、イグニッションキーをひねる。

おーお、気が立ってる。
シンはほくそ笑み、余裕しゃくしゃくで英二に手を振った。

「じゃあな、英二。けっこう楽しかったぜ」
「うん、ほんとにありがとう、シン」
「アレックス!!」
「イエス、ボス!」

そこで、やっとエンジンがかかった。
車は何度か胴震いしたあと、
やがて飛び出すような勢いで走り去っていった。
そのあわてふためいた後姿を、シンはクスクス笑いながら見送った。

「なんだ、おまえ、えらくあのジャパニーズが気に入ったみてぇだな?」
「んー? まあな」
面食らったようなラオに、シンはさっきまでとはうってかわった上機嫌さで返事をかえした。
空をあおぐと、冬の雲が早い動きで走り去ろうとしている。

ま、これくらいの意趣返しはさせてもらわねぇとな。

END


このあと、当然アッシュにコトのいきさつがバレ、
そこから大人の時間が…(ウソ、うそです)

Posted on 2011/02/13 Sun. 12:14 [edit]

category: BANANA FISH(創作)

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13

近況と拍手のお礼 

きょうはそうでもないですが、昨日は寒かったですね~。
会社でもインフルエンザが大流行りで、毎週誰かしらダウンしてます。
今んとこ私は、かなしいほど健康ですが。はっは。

もともと気温が十度くらいのが体調いいタイプなんですが、
代わりに暑さにはめっぽう弱く、去年の夏は毎日が臨死状態でした…
思えば、今回のBANANA回転がはじまったのは、まだ残暑きびしい9月頃。
案外、暑さでアタマをやられてたのが、回転を加速させた理由のひとつだったのかも。

日曜はヒマこいてたので、寒さにめげず神宮外苑を散策してきました。
夕刻の絵画館がとてもきれいだったのですが、私が撮ると↓なんかボケボケに…

絵画館

3、4年前に買ったカメラ(700万画素くらい)の性能のせいにしたいとこですが、
やっぱ問題は私の腕のなさでしょうねぇ。
まがりなりにもブロガーなわけですから、たまにはイケてる画像をアップしたいのに!
ああ、英二に教えを乞いたい気持ちでいっぱいだ…

さて、本日までの拍手のお礼です。
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Posted on 2011/02/07 Mon. 23:50 [edit]

category: お礼

thread: 管理人日記  -  janre: アニメ・コミック

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